フィリピン針生旅日記

フィリピン一人旅 

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自作恋愛小説 HIMITSU 禁断の愛 第5章 プチパリ HANOI 21

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※ ようやくアラーンから連絡が入る。そして。



 

最近、公共事業の発注が増えたためか、連日警備会社の事務所には、朝から仕事の依頼が絶えない。

そのころ、吉雄はまだ狭い部屋の中で眠りについていた。

かばんの中に入れておいた携帯電話が鳴り響く。

「はい、山越です。はっ?えーと今晩の6時からですか?えっーなんとか休養をとって行きます。」

夜勤の仕事を早朝に終えたばかりで、まだ熟睡していない。小さな窓から差し込む光は、晴天を意味して

いるのだろうか。
 
最近、夜勤シフトを連日こなし、会社からの依頼で夜勤明けの日勤依頼もある。

会社から依頼されて無意味に断るのも、今後の仕事を消化するうえでは、好ましくないと思ったのか、

吉雄は、ほとんど依頼を受けていた。

そのことがたたり初めてきたのか、どうも腰の具合があまりよくなく、立っていることさえきつく感じるこのごろ

だった。

「今日は、ゆっくり休む予定でいたが仕方がない。仕事があるうちが花だ。あいつ(アラーンのこと)

とは、今度会ってけじめつけてやる。もう許せん。あれからも電話一本も自分からかけてこない。

なにか、後ろめたことでもあるというのか。・・・・」

アラーンのことを思いださない日々は当然ない。頭の中を掠めることといったら、ベトナムに置いてきた妻のこと
だ。

洗面器を一回り以上も小さくしたような、流し台に水をはり、顔を洗ってから鏡で自分の顔を見る。

青白さと目の周りが腫れぼったい。

少し連日勤務がたたりてきたのか、体調も優れない。しかしあと2ヶ月、年度末の3月までは、なんとしても 

我慢をして働かなければ今後の人生設計が崩れる。

吉雄は、アラーンと別れる近い将来を予測して、自分だけが食べていけるだけの大まかな設計をたてた。

年間約5ヶ月ほど日本で仕事をし、残りの7ヶ月は日本より物価の安いアジアベトナムで暮らす。

もちろん、アラーンと営んでいた雑貨屋は、彼女たちにくれてやり、彼女とは入籍もしていないので、双方の

納得と了解を元に別れることは簡単だ。

インスタントコーヒーをステンレスカップに注ぎ、熱いうちに飲みながら考えた。

「よし、俺もよく女性関係では失敗を繰り返してきたが、これからは、自分のことだけを考えて生きていけばいい


ので気が楽になった。以外と逆境が好転して成功の素になっているかもしれん。」

彼なりの勝手な論理だった。

あしかけ、3年弱の関係が続き、そのうちの半分の期間は、日本で労働に従事していた。

アラーンと出会いが始まってから、幾たびの過去を振返っても思い出されることは、激動の普通の一般カップルに

はない、貴重な体験ばかりだった。
 
低いコンクリートジャングルの片隅にある、一部屋の空間。

天井を見上げても青い雲は見えない。

いつの日か、晴れ渡る秋空に白い体操着を着た子供たちが、親と戯れるように、吉雄もそんな幸せな家庭を夢見て

いたというのに。・・・

そのころ、吉雄の苦渋の決断をしたころ、アラーンは矢崎と喧嘩をしながらも、どうにか家にだどり着いていた。

玄関口のドアを開けると、きしきしと板と金属が重なりあう音が、いっそう暗い未来を予測するようだ。

2,30mほど離れた後方に矢崎は、どうにか体を支えるように立っていた。

まだ朝の光が立ち込めるには時間が早すぎる。

そんな早朝に彼女たちは、飲まず食わず、バス賃さえも無くなるほど、哀れな姿をさらけ出し、彼女の妹を頼りに

戻ってきた。

「ただいま、・・・・・・」

まだ眠いのか、妹のグレンは目をこすりながら、ドアの引き戸を開ける。

「姉さん、いったいどうしたというの。本当に心配していたんだから。・・・・」

二人は、目線を合わせず、ただ黙って家の中に入るアラーンを静止するように、彼女の肩に手をかけた妹。

「ねぇ、待ってよ。何とか言いなさいよ。みんな心配していたんだから。・・・・」

妹の問いかけに、ようやく重い口を開くアラーン。

「みんなに迷惑かけてごめんね。何日もお金なくなってさまよったわ。ご飯もろくに食べていないわ。・・・」

顔をうつむき加減に下を向いて今にも泣き崩れそうになるくらい肩を落とし、傍から見るとアラーンが妹から折檻

を受けているように見える。

ようやく、時がたち玄関先から部屋に入り、妹が入れてくれたお茶とベトナム風米麺を口にする。
 
乾燥麺を手早くお湯に入れ茹で、姉アラーンのために作った。

「あっ!おいしい。こんなにフォーがおいしく思ったのは久々よ。だってほとんど何も食べていなかったわ。」

どんぶりごと口につけ、一気に残ったスープをたらい上げた。姉さん、あの男はどうしたの?・・」

会話の切り始めが、連れの日本人についてだった。

重そうに麺の入ったどんぶりをテーブルに置くと ゆっくりと妹に話始めた。

「彼は、今、外にいると思うわ。何か食べさせてあげてもいいかしら。だめかしら。?・・・」

目線をやや斜めうわずかいにあげ、遠慮がちに話す。

「あの人に誘われて姉さん、どこかへ行くからおかしくなっちゃったのよ。もっとしっかりして。吉雄さん

が何度も電話かけてきたわ。でももうあきらめたと話ていたわ。いったいどうするの。・・」

「そう、そうよね。私の起こした行動は、もう取り返しがつかないことになっちゃたわ。・・・」

「今からでも遅くないわ。吉雄さんに連絡して。あの人、すごく心配しているはずだわ。」

妹グレンは、あせる気持ちをすぐ姉アラーンに伝える。

しかし、アラーンはしばらく沈黙のあとに、重い口を開き始める。

「わかったわ。あとで電話するわ。その前にあの人に何か食べさせてあげて。・・・」

グレンは、優柔不断なアラーンに怒りを覚えたのか、机にあった皿を勢いよく叩きわるように置き直した。

そして最後の通告を言い渡す裁判官のように言った。

「まだ、あの男のことが気になるの。あの男さえ、姉さんのところに来なければ、今まで通り何事もおき

なかったはずよ。いい加減にしてよ。・・・」

妹グレンは、アラーンの返事を聞く前に、台所へ逃げるように戻ってしまった。

「お願い、あの人このままだと 飢え死にするわ。だから・・・・」

「そうなればいいのよ。姉さんと吉雄さんの関係を知っていながら、二人の関係にひびをいれた張本人は、あいつ

なんだからね。・・」

グレンが見つめる目つきは、鷹が獲物に狙いを定める瞬間に似ている。



外は、北部ベトナム地方特有の冬が始まろうとしていた。

毎日、曇り空、小雨の降り止まぬ日はこのところない。そんな小雨の降る空を見上げ

ながら、憂鬱そうに黒いレインコートに身をすぼめ、木陰に雨宿りをしている矢崎がいる。

無精ひげ、長く整髪されていない髪の毛からも、体臭のきつさが残っている。

アラーンが家からようやく出てきた。小走りに矢崎のそばに駆け寄ってくると早口で話始めた。

「家の中に入って。何か暖かいフォーを食べましょう。・・・・」

喧嘩ばかりしてどうにかこうにか、ようやくアラーンの家に辿りついたふたり、空腹を通り越して

惨めさだけが、ふたりの仲に存在している。

「いいのか、お前。俺のこと見切りつけたんじゃないのか。・・・」

ポケットの中に手をいれ、まさぐるようにたばこを探し、一本のたばこに火を点ける。

「そんなこと言っている場合なの。あなたも私もとにかくお腹が空いて、どうしようもないのよ。・・・・・」

戦場の兵士に喩えるアラーンには、少しばかり過激すぎる。妹グレーンの態度が柔和だったことを受け

今後に期待がもてるかのようだった。

「そうか、じゃ、いただくとするか。・・・・」

家の中に入るとグレーンの見つめる目つきが、冷たくするどかった。

今にも矢崎には向かっていきそうなくらい、怖く殺気じみた感じだった。

「姉さん、早く吉雄さんに電話して。謝るのよ。まだ間に合うわ。ねぇそうでしょ。もう一度

やり直して。彼はまじめに日本で働いて姉さんのために仕送りしてくれるの。」

「わかっているわ。でもあの人私を許せないと思うわ。・・・・」

「そんなこと言いきれるの?私からも話てみるわ。・・・」

いったん、そう話たあとグレンは、矢崎の顔を見上げたあとその場から立ち去る。

「俺、中国に帰る。汽車賃くれよ。・・・」

「あなたパスポートさえも無いのにどうやって中国に入ることができるというの?」

矢崎は、アラーンの前でうなだれたまま、熱いスープを一気に口に運んだ。

白い息とスープから立ち込める湯気が微妙に寒気の町を現していた。

妹グレンが手に携帯電話を持ち、アラーンの前に立ち尽くす。

「姉さん、今すぐ吉雄さんに電話かけて。・・・」

アラーンは、妹の行動に躊躇しながらもしばらく黙り込む。

そして、矢崎の顔色を伺いながら、グレンが手渡した携帯電話のデイスプレイを覗きこんだ。

「でも、私、彼との関係終わりだと思うの。・・・・」

「そうよ、あたりまえよ。彼もそう思っているわ。でもけじめだけはつけなきゃね。だから謝るのよ。

これからよりを戻すために謝る意味ではない。・・・・」

言葉の端端が、とても厳しく感じた。

携帯電話を持ち、吉雄の電話番号にスライドさせる。

呼び出し音が鳴り、しばらく待つが応答がない。

そのころ吉雄は、交差点のほぼ中央に立ち、片側交互通行の誘導をおこなっていた。

「あれ、電話がかかってきたな。誰からだ?・・・・・・・・・」

休憩時間を交代でとる。ようやく吉雄の番が来た。

隊長から指示を受けた吉雄は、返事をする間もなく、携帯電話の着信番号を見る。

「あれ! 妹グレンからだな、ずいぶん久々だな。かけてみるか。・・・」

吉雄は、アラーンからの電話だとほとんどこのとき予想さえしていなかった。

「もしもし、グレンちゃん?どうしたの?・・・・・」

電話口から聞こえる吉雄の声とともに、道路を走り抜ける車の騒音が耳に入る。

「吉雄さん、今お仕事?・・」

「大丈夫、これから休憩だからさ。それで何か用事かな。・・」

吉雄は歩きながら話をする。

「姉さんが戻ってきたの。だから・・・・吉雄さんに連絡しようと・・・・」

「そうか、あいつ戻ってきたんだ。それで・・・?」

「だから、姉さんは吉雄さんに謝りたいの。ねぇ、姉さんと話してくれる?・・」

「いいよ。でも俺、もう決めたからな。浮気は許せない。しかも俺が知っている奴だ。

それに飯が食えなくなったから、家に戻ったはないな。そんな連中ほっておけ。・・」

道路工事現場ではユンボが、ダンプカーに残土を積んでいた。

その音は、グレンの電話からもよく聞こえた。

しばらく、沈黙の時間が過ぎ工事現場の音と重なるように、吉雄はグレンに告げる。

「今 、忙しいからアラーンから俺の携帯電話に電話させて。・・・」

「うん、わかったわ。吉雄さん、お願い、姉さんの話聞いてあげてね。・・」

「・・・・・・・・・・・」

吉雄は、黙っているだけだった。

現場監督が、隊長に耳もとでささやいているのが、吉雄の目に留まる。

「あの人片側交互通行誘導がうまいから、明日からうちに来てもらえんかな。

きのう来た人、あれはだめだな。あの人は経験浅いけどいいセンスしている。」

現場監督の白いヘルメットには、いくつもの安全管理責任者であることを証明するシールが

貼られている。

隊長は、吉雄が休憩時間にたばこを吸っているとそばに寄り沿ってきた。

「山腰君、いい知らせがあるよ。何だと思う?」

無精ひげが伸びきった口元からヤニ黒い歯を汚く見せながら、不気味な笑いを浮かべて言う。

「何ですか、いい話って?最近悪いこと続きで、気持ちが落ちこんでいましたからね、気に

なるところですね。」

「君の仕事ぶりが監督に認められてね、明日から当分の間、専任でここの現場に来てほしいそうだよ。

よかったね。この現場は忙しいけれど残業もあるし、工事期間が長いから生活も安定するしね。」

普通このような話を聞くと、喜ぶ隊員が多いはずだが、吉雄も最近交通誘導員の仕事がわかって

きたのか、少しもうれしくない。

今、任されている片交は、3車線規制の交差点のほぼ中央に立って、誘導しなくてはならないうえ、枝

道がいくつかあり、そこから車両が進入したり、または入っていくためとても難しい。

ミスをすれば、混乱を招きかねない、もっとも重要かつ危険なポジションだ。

「わかりました。・・・」

「あまりうれしくないようだね。」

隊員の中には、忙しくてきつい現場とわかると、わざとミスをしたり、やるきをみせない素振り

を見せるものもいる。

吉雄は、与えられた仕事を一生懸命にこなすため、きつい仕事でも文句も言わずこなしてきた。

その結果、要領がいい他の隊員に比べるときつい現場を割り当てられることもあった。

しかし、不況下の中、一年間のうち、約半年仕事に就けることは、吉雄の生活を維持する上でも

大きなウエートを占めている。

仕事帰り、自転車のペダルも重く感じる。夕方帰りのサラリーマンたちが歩道にひしめきあいながら

歩いている。

車に縦列して並ぶように、吉雄の自転車は下町にある部屋へ進路を向けていた。

かばんの中に入れてある携帯電話が鳴り響く。

自転車を歩道の脇に止め、かばんから携帯電話を取り出す。

アラーンからの電話かもしれないと思い、ひと呼吸おき、携帯電話に指をあて耳をかざす。

「はい、もしもし。?山腰です。・・・・・」

しばらく相手からの声が聞こえない。

もしかするとアラーンからの電話かもしれない。

吉雄は、相手の声が聞こえるまで待ってみた。

「もしもし、どちら様ですか?・・・」

「私 アラーン。元気 吉雄さん?・・・・・・・・」



続。
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  1. 2012/08/11(土) 06:00:22|
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針生 あつし

Author:針生 あつし
フィリピンの好きなところ。
言葉が通じる。海がきれい。!
人間がおおらかで、ソフトで優しい。
日本人のようにに細かいことにうるさくない。
南国気分を味わえる。
日本の生活に息抜きしたくなったら、フィリピンに行きましょう!



 
  

 
 
 

 


 
 



 
 
 































 


 



 
 









 
 


 




 
 
 

 










 


 


  

 






  




 




  


 



 














 

 





 


 
























 

 



















 





 



































 











 

 
 




 

 
 

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